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【CFD/格子法】乱流モデル(RANSとLES) 【格子法入門 #7】

格子法入門第7回は、乱流モデルの基本的であるRANSとLESについて解説します。「格子法入門」では第6回まではCFD(流体解析)の仕組みについて解説しました。

今回は今までと少し変わって、CFD(流体解析)を実務で扱う人が最低限知っておきたい実用的な知識について解説したいと思います。乱流モデルは式がわかりにくいので、アカデミックな話をすると疲れます。その代わり、中身を知ってなくても使えるようになっているので、表面だけ理解しておきましょう。

乱流モデルはなぜ必要か?

CFD(流体解析)を行う上でなぜ乱流モデルが必要なのでしょうか?

それは、格子という大きな枠組みで捉えているせいで、格子より小さい流れをとらえられないからです。乱流モデルは格子より小さい渦をとらえるための補助機能になります。つまり、もし格子を極限まで小さくしてナビエストークス方程式を解けば、乱流モデルなんか必要ありません。

そういった点では、乱流モデルは物理モデルとも呼ばれますが、厳密に言うと補助物理モデルです。物理モデルはナビエストークス方程式であり、乱流モデルはそれを補助する形で使用します。

だからこそ、どの乱流モデルを使うかが重要になります。補助機能なので、間違ったモデルを選んでしまうと補助の意味をなさないので、下手したら結果が悪化する可能性もあります。

今回は、失敗しないための最低限の乱流モデルを紹介します。

RANS

最も有名な乱流モデルがRANSでしょう。RANSはReynolds-Averaged Navier-Stokesの頭文字をとったものです。

RANSは渦の時間平均をとることで、ナビエストークス方程式を補完します。時間平均をとるということは、渦が時間で変化しない=定常流れであるということです。

RANSで有名なのはk-εモデルとk-ωモデルです。その二つを組み合わせたのはSSTモデルです。それぞれの違いは下記のとおりです。壁周辺は乱流が発生しやすいので、壁に近いかどうかが重要になります。

  • k-εモデル 壁から遠いと精度が良い
  • k-ωモデル 壁近くの精度が良い
  • SST 壁からの近さに応じてk-εモデルとk-ωモデルを切り替える

乱流が発生するかどうかを事前に知るのは難しいです。そのため、SSTモデルが最も安全であるということがわかると思います。

RANSは定常流れを扱いますが、非定常用のRANSとしてURANSというものもあります。ただしこちらは精度があまりよくないので使われる機会は少ないです。

また、RANSの問題として旋回流や剥離は再現できないという問題もあります。

LES

LESは「Large Eddy Simulation」の略称です。LESでは大きい渦は通常のナビエストークス方程式で解析して、格子よりも小さな渦は特別な補間モデルで解析するという手法です。

LESでは非定常を扱うので、RANSに出来なかった大きな剥離を解析することができます。非定常流れを扱う方は多いと思うので、LESはかなり多用するモデルになると思います。

DES

DESは「Detached Eddy Simulation」の略称です。DESはRANSとLESを合わせた乱流モデルです。壁の近くではRANS、壁の遠くではLESを使ってモデル化します。

できれば全部LESにしたいのですが、壁の近くでLESを使おうとすると、非常に細かい格子が必要になります。そのため、ある程度格子を大きくしても良いように、壁周辺だけRANSを使うというわけです。

おわりに

全体をまとめると下記のとおりです。

  • 乱流モデルはナビエストークス方程式を補完する物理モデルである
  • 定常流れに対しては、SSTモデルを使う
  • SSTモデルは壁からの近さに応じてk-εモデルとk-ωモデルを切り替える
  • 非定常流れに対しては、LESを使う
  • LESはRANSの100倍程度時間がかかるので、DESという壁周辺だけRANSを使うモデルもある

乱流モデルは長い歴史があり、かなり確立した技術です。完璧ではないものの、ある程度は現実的な答えを得るための補助になってくれるので、上手く付き合っていきましょう。

どの乱流モデルを使うかは意外と重要なので、ぜひ今回のまとめを参考に乱流モデルを選択してみてください。