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【CFD/粒子法】影響半径とカーネル関数 【粒子法入門 #2】

粒子法を用いた流体解析(CFD)の解説を行っています。第2回は、粒子法の最も重要な特徴である影響半径とカーネル関数について解説します。

前回は格子法と粒子法の違いについて解説しました。まだ見てないかたはこちらからどうぞ。

粒子の相互作用

CFDとして歴史の長い格子法では、周りの流体との相互作用は隣接セルの参照で行われます。しかし粒子法では計算点が移動するため、必ず接している粒子というものが存在しません。粒子の位置は時々刻々と入れ替わるので、土の粒子が周りにいるかを確認する必要があります。また、どのように周りの粒子を判断するかも重要になります。

粒子法として歴史の長いのが、DEM(離散要素法)という方法です。DEMでは衝突した粒子を判定し、それに応じた力を与えます。

例えば、粒子が接触したときは反力を与え、すれ違うときは摩擦を与えます。イメージとしては、流体をたくさんの微小な剛体で表すようなものです。

ただ、DEMを使用して粒子を小さくしていくと、その衝突の判定をする必要があるので、どんどんと時間刻みを小さくする必要がでてきます。その結果、砂利などの粒の粗い物体の解析は可能ですが、液体などの流体を計算するのは困難になります。

その対策が平均化です。CFDで使用する粒子法では、粒子はあくまで代表点として表されます。代表点を用いた解析であるため、粒子径の影響を受けにくく、実際の流体に比べて粒子が大きくてもそれなりに良い結果が得られます。

その代表例がMPS法とSPH法です。これらの詳細は次回以降で解説します。今回は、代表点による計算で上手く流体の動きを捉えるための影響半径について解説します。

影響半径

影響半径とは、粒子が周りの粒子との影響を与え合う領域の半径のことです。

影響半径は、圧力やせん断速度などの周りの粒子との相互作用を計算する際に用います。例えば粘度計算でいうと、周りの粒子が相対的に遅いと粒子の速度が低下します。この時、影響半径の大きさによって参照する粒子数が変わるため、影響半径の大きさによって最終的な計算結果に影響を及ぼすことになります。

影響半径はメリットとデメリットを考えつつ適正な大きさに設定する必要があります。

影響半径を大きくすることで、粒子同士の細かい相互作用を計算することができます。一方で、どの粒子が周りにいるか探索する必要があるため、計算時間が増えます。

逆に影響半径を小さくしていくと、DEMのように接触した粒子しか計算できず、平均化によるメリットが得られなくなります。

上記を考慮して、一般的には影響半径は粒子径の2.1~3.1倍程度で使用されることが多いです。上の図だと大体粒子径の3.1倍程度ですね。

カーネル関数

カーネル関数(別名:重み関数)とは、影響半径内における影響の度合いを表す関数です。近ければ影響が大きく、遠ければ影響が小さいといったイメージは分かると思いますが、粒子法ではそれを関数で表します。

下記の図を見ると、中心が最も影響が大きくて外側にいくにつれて値が急激に小さくなることがわかります。外側の裾の部分が不要だと思ったら、影響半径の大きさを小さくしたり、カーネル関数を変更することで対応できます。

図でイメージを掴んだと思うので、数学に移りましょう。影響半径をreと置くと、reより大きな場合は0となり、reより小さな値でカーネル関数を計算することがわかります。よって、カーネル関数w(r)は下記のように表せます。

$ w(r) = \left\{ \begin{array}{ll} \frac{r_e}{r} & 0 \leq r \leq r_e \\ 0 & r_e < r \end{array} \right. $

w(r)はカーネル関数、rは半径位置、reは影響半径です。これは何を意味しているかというと、rがre以下に収まる場合は影響を考慮し、reより外では影響がないことを表しています。影響半径内の$re/r -1$はカーネル関数のイメージ通りで、中心に近いほど大きくなることを表しています。

ちなみに今回上記で示したのは、MPS法で使用されるカーネル関数です。SPH法では他の形状のカーネル関数が色々開発されています。いつかまとめて紹介しても面白いかなーとか考えてます。

おわりに

今回は影響半径とカーネル関数について解説しました。

粒子法では代表点を使用して計算するため、適度に大きな範囲で相互作用を計算する必要があり、影響半径というものが用いられます。影響半径とは、半径内にある粒子の相互作用を近さに応じた影響度で重み付けして粘性や圧力の影響を与えるというものです。

影響半径内の影響度合いを表すのがカーネル関数です。カーネル関数は中心が高く、外側が0に沿うようなグラフが使用されます。SPH法では様々なカーネル関数が提案されています。

今回は以上になりです。今後も粒子法について解説していきますので、お付き合い頂ければと思います。粒子法の特徴もわかったところで、次回は粒子法のメリットについて解説します。下記からどうぞ。

youtubeでも解説しています。よければそちらも見ていただけると幸いです。