「人間の知識の進歩は急速となり、今の私たちは思いもよらぬものが発見される。私は自分がこんなに早く生まれてしまったことを後悔している。というのも、100年後にわかることを知るという幸せが得られないからだ」
ベンジャミン・フランクリン
世の中あらゆる点で見れば、良くなっています。しかし、世の中には悲観的な発言があふれています。例えば、「働きすぎ」「貧富の差が開いている」「不平等」「食生活の悪化」。これらは全て過去から現在で改善されている事柄であるのに対して、このような間違った認識が広まっています、なぜでしょうか?
「昔が良かった」というバイアス
このような実際よりも悪いと思わせるバイアスには3つの原因があるとスティーブン・ピンカーは述べています。
1.悪いことは良いことよりも人を引き付ける
2.批判者のほうが道徳的関心があるように見える
3.昔のほうが良かったノスタルジー
この中でも最もやっかいなのは、「3.昔のほうが良かったノスタルジー」であり、貧困を経験した本人でさえも、昔のほうが良かったと記憶の改ざんが起こってしまうのです。
アメリカ14代大統領のフランクリン・ピアーズ・アダムスはこう述べています。
「古き良き日々の最大の要因は、ダメな記憶力だ」
「現代人は働きすぎ、昔の人は現代人よりも働いていなかった」というのは本当でしょうか?
これは、間違っていません。ただ、理由があるのです。
「昔の人が働いてなかった」の理由
昔の人が長時間働けなかった理由は「カロリー不足」です。
現代の最も大きな進歩といえば、食料が簡単に得られるようになったことであり、これにより一日の活動量の大幅に上がりました。
人間は手に入る食料を常に上回る
マルサス
とも言われていたほどに人口増加は激しいものでした。
これを改善したのは何でしょう?
大きな要因は「産業革命」と「窒素生成」です。
産業革命によって農業の生産効率が上がり、数千倍の効率になりました。さらに窒素生成(ハーバー・ボッシュ法)により、鉱石を用いずに肥料の生成が可能になり、生産量が増加しました。
つまり長時間労働をしているということは、充分にカロリーが取れるようになり、活動量が最大になったという証なのです。あくまで長時間労働を肯定する気はないですが、カロリー不足で動けなかった昔よりは数倍生活が良くなっているといえるでしょう。
次に不平等についてです。「貧困」「男女不平等」ももちろん現代で大幅に改善しています。
「資本主義で格差が広がる」と主張したマルクスが死んだ年は生まれた年に比べて3倍豊かになっており、貧困率も1/4になっています。特に、産業革命では30年間で、人口が30%増加し。所得は2倍になっています。
貧困と関連していることとして、識字能力があります。識字率が最も低いと言われているインドでさえ、1947年の17%から現在は74%に増加しています。特に15~24才の識字率は90%以上です。このことからも、親から子供への貧困の連鎖も徐々になくなってきていることがわかります。
男女不平等についてももちろん改善しています。そのきっかけはルソー、サミュエルズの小説といわれており、主人公が女性だったため、女性への共感が高まったと言われています。さらに、第一次世界大戦で男性が前線に出た際に、女性が代わりに仕事をすると何も問題ないことがわかり、地位が高まったと言われています。
では、現在の格差はというと、健康格差の96%が埋まり、就学格差の95%が埋まっています。ただ、経済格差が59%であり、これだけは改善の余地ですね。
おわりに
以上で、わかってもらえたと思いますが、昔よりも今のほうが豊かになっているということです。
貧困に原因などありません。原因があるのは繁栄だけです
ジェイン・ジェイコブス
youtubeでも本紹介してます。
参考:進歩「人類の未来が明るい10の理由」 ヨハン・ノルベリ