分子動力学では、分子間の力を対象として計算することになります。
しかし、実際に見たい現象としてさらにマクロな現象を対象としたいことが多くあります。その中でも特に多いのがコロイドなどのメソスケールな物理現象です。
メソスケールを対象とした解析を粗視化分子動力学といいます。
粗視化分子動力学はまだ発展途上であるため、多くの手法が模索されており、研究が盛り上がっている分野とも言えます。
ここでは、コロイド粒子間に働く力を紹介します。
ファンデルワールス力
2つの粒子に働くコロイド粒子には、ファンデルワールス力による引力が働くことになります。
コロイド粒子内の全ての分子は、他のコロイド粒子の全ての分子に対してファンデルワールス力による相互作用が働くことになります。
ファンデルワールス力はポテンシャルエネルギーで模擬されるため、ポテンシャルエネルギーの総和がコロイド粒子間に働くことになります。
静電力
溶液中のコロイド粒子は、表面が価電してその周りに反対電荷のイオンが集まります。
これによって、例えばコロイド表面に陽イオンが集まると、その周りに反対の陰イオンが集まることになります。
このように+ーのイオンの層ができることを電気二重層といいます。
電気二重層は陰イオンの周囲にゆるやかに陽イオンを集めることになります。これを拡散電気二重層といいます。
拡散層ではイオンの偏りのため、粒子内に溶媒が貫通しやすくなります。これにより、浸透圧が発生して斥力が働くことになります。
静電力は、ファンデルワールス力と合わせてコロイドに働く主な力とされています。
2つの力の和でコロイド粒子間の力が決定されるという考え方をDLVO理論と呼びます。
凝集
溶媒にポリマーが添加されている場合、コロイド粒子に吸着することがあります。
コロイド粒子間にポリマーが入ることによって、コロイド粒子がポリマーによってつながる架橋凝集が発生することがあります。
また他にも、コロイド粒子の間にポリマーが集まることでコロイド粒子間の濃度が上がり、コロイド粒子に浸透圧が発生してもあります。こちらは枯渇凝集と呼ばれます。
おわりに
今回はコロイド粒子間に働く相互作用について説明しました。
基本は分子間力とほとんど変わりません。ただし、スケールが大きくなった分、総和を考える必要があります。また、ポリマーなどの溶媒に関する影響も考慮した計算が必要になります。
コロイド粒子にはブラウン動力学に基づくランダム力や分散媒による散逸力も働くことになるため、コロイド粒子には他の力も働くことになります。
粗視化分子動力学など、様々な力を簡易化した手法もありますが、これらも理論を理解した上でないと解析結果を正しく評価できません。
何を簡易化しているかを理論から理解しておくことで、解析を正しく評価できるようになるでしょう。
実用的な対象を解析したい場合は簡易化は必要ですが、その分手法は複雑になります。適度な簡易化を理解した上で、理論上に正しいかを考えながら解析できるようになると良いでしょう。