CG技術の広がりもあり、流体解析の使用用途はメーカーで使用されるCAEだけに留まらなくなりつつあります。また、昔は格子法で全て解析していたのが、CG分野で粒子法が使われ始めたことで、解析の分野は急激に進歩しています。
ただ問題として、CFD(数値流体力学)の日本語情報があまりに少ないので、初学者のかたは非常に苦労されると思います。特に、解析に特化した書籍は難しい内容のものが多く、ネットの情報も不十分です。
そこで、はじめて流体解析を学ぶ人向けに、とにかく簡単な内容に絞って動画を作成しました。必要最小限の数式を、じっくり時間をかけて説明していきます。
非圧縮のナビエ・ストークス方程式を解いていく動画なので、CAEなら非定常を扱う予定の人、もしくは流体CGの理論を大まかに理解したい人向けです。
1.対流
対流とは一般的に私たちが指す「流れ」のことです。
川の上流から下流に流れていくのは、対流による影響です。
ここでは最も基本となる対流について説明します。対流は基本ですが、最も難しい部分でもあります。きちんと理解しておきましょう。
2.非線形対流
第一回で説明したのは厳密には「線形対流」です。
線形な動きしかしない対流は捉えやすいですが、非線形となると話は別です。ここが対流の難しさになります。
非線形になることで計算が非常に難しくなり、ナビエストークス方程式が解けない理由となります。これを理解することが、流体解析のキモと言ってもよいでしょう。
3.拡散方程式
対流について理解したら、次は拡散方程式です。
拡散とはつまり粘性のことです。値が周りに引きずられて広がっていきます。
マクロ的には、温度が広がったり、粘性により速度が引きずられたりといった挙動に見えますが、ミクロでは分子のぶつかりによって物性値が広がっています。
分子として理解するのは不可欠ではありませんが、このスケール感を持っておくと、ナビエストークス方程式のそれぞれの項が実際に意味しているものの理解につながるでしょう。
4.バーガース方程式(対流+拡散)
対流と拡散について理解したので、それらを組み合わせたバーガース方程式について見ていきましょう。
バーガース方程式と聞くと難しそうですが、今までやったことを組み合わせただけです。
バーガース方程式を例として、一見難解そうな式に慣れておきましょう。
5.2次元対流
ここから次元を増やしていきます。
最終的には3次元の解析をやりたい方がほとんどだと思いますが、今回の流体解析入門コースでは二次元までしかやりません。
三次元をやらない理由は、可視化の難しさと、二次元でも十分難しいからです。
二次元対流でも数式の項が増えて結構疲労すると思います。ぜひこの数式の複雑さに慣れていきましょう。
6.非線形2次元対流
二次元の線形対流について説明したので、次はもちろん非線形です。
一時減と違い、線形から非線形になると項が増えるので意外と難しいです。躓かないようにじっくり式を理解しましょう。
7.2次元拡散方程式
対流について理解したら、次は拡散方程式です。
拡散方程式は対流と違って二次元でも比較的簡単です。
周囲に値が広がるだけなので、イメージもしやすいでしょう。
8.2次元バーガース方程式
二次元でもバーガース方程式を扱っていきます。
ここからかなり複雑な式となります。xとy軸に加えて、対流と拡散項が現れます。
このように流体解析では様々な項が増えていくことで複雑な式に見えますが、実際は理解しやすい要素に分割して考えられます。今までやってきた内容を理解していれば、一見難しそうな式も理解できるはずです。
9.ラプラス方程式
ここからは大きく変わって、圧力について扱っていきます。
ナビエストークス方程式は、非定常な対流と拡散と圧力の影響を考える式です。
対流と拡散は今までやってきましたが、圧力についてはまだ触れていなかったため、ここから扱っていきます。
ラプラス方程式は、ソース項を持たない圧力式です。この後説明するポアソン方程式の簡単なバージョンと言ってもよいでしょう。
そのため、まずはラプラス方程式から理解していきます。
10.ポアソン方程式
ラプラス方程式について理解したら、本命のポアソン方程式について理解していきましょう。
ポアソン方程式は流体解析において、圧力を計算するために使用します。
11.流体流れを解く
ここからは今までの内容を全て活用して、流体解析を行っていきます。
流体解析では、対流と拡散はまとめて解く一方で、圧力は別で解きます。
本来はナビエストークス方程式を一括して解ければスマートですが、それはできません。そのため、圧力だけは後でポアソン方程式で修正するという形になります。このような方法をMAC法と呼びます。
今回はMAC法については説明しませんが、本サイトでは格子法の入門について全般的に触れているためサイト内検索すると記事がヒットします。
12.流体流れを解く(生成項あり)
最後に、別の流れについても解いていきます。
実際の流れ計算では、協会においてソース項と呼ばれる力や速度を生成する項がある場合がほとんどです。
流体解析において、境界条件は一つの重要な要素です。ここではお試しとして、ソース項ありの場合の計算についても見ていきます。
おわりに
上記の動画を見てもらえると、CFDにおいて最重要なナビエ・ストークス方程式を解析で解く方法がわかってもらえたと思います。
ナビエストークス方程式は、対流・拡散・圧力に分けて考えることができます。まとめて考えようとすると複雑怪奇に見えてしまいますが、分けるとそれぞれは大したことありません。
まずは分割してそれぞれについて理解し、そのあとに組み合わせた複雑な式を学んでいくことで、難しいステップを分割して進めることができます。
ナビエストークス方程式の数式を見るだけでも結構疲労しますが、それぞれの役割を知った後であればかなり楽に理解できるでしょう。
今回のコースを理解した後に、可能であれば3次元の式にもチャレンジしていただくと、今までよりも抵抗なく勉強を進めることができるでしょう。
本サイトでは、流体解析で使われる手法について色々紹介してますので、探してみてください。例えば、格子法や粒子法どちらについても基本から解説しています。
また、プログラミングについても学びたいという方は下記にてPythonを使ったCFDの基本について解説しています。こちらもどうぞ。