はじめに
火成岩(Igneous Rock)は、地球内部で溶けた岩石が冷却して固まることで形成される岩石の一種です。その形成プロセスや化学組成、物理的性質は、地球の進化や地質学的現象を理解するために極めて重要です。本記事では、火成岩の基本的な分類、形成メカニズム、科学的背景、およびその地質学的意義について初心者にもわかりやすく解説します。
火成岩の基本的な分類
火成岩は、その形成場所や冷却速度によって以下の2つに分類されます:
- 深成岩(Plutonic Rock):
地殻深部でゆっくり冷却されることで形成される岩石。結晶が大きいのが特徴です。- 例:花崗岩(Granite)、閃緑岩(Diorite)
- 火山岩(Volcanic Rock):
地表またはその近くで急速に冷却されることで形成される岩石。微細な結晶やガラス質を含むことがあります。- 例:玄武岩(Basalt)、安山岩(Andesite)
火成岩の形成プロセス
火成岩は、地球内部で発生する火成作用(Igneous Process)によって形成されます。以下のプロセスを詳しく見ていきます。
1. マグマの生成
地球内部の熱源
地球内部のマントルや地殻は、高温と高圧の状態にあります。この環境下で、岩石が部分的に融解することでマグマが生成されます。
- 熱源の例:
- 放射性元素の崩壊
- マントルの対流による熱移動
融解のメカニズム
岩石が融解する主な原因は次の3つです:
- 減圧融解(Decompression Melting):
圧力が低下することで融点が下がり、岩石が溶ける現象。 - 加水融解(Hydration Melting):
水分が供給されることで融点が低下する現象。 - 熱的融解(Thermal Melting):
温度の上昇により岩石が融解する現象。
2. マグマの上昇と移動
マグマは密度が周囲の岩石より低いため、浮力によって上昇します。この過程では、マグマが地殻の割れ目を通って移動し、地下深部に貯留されるか、地表に到達します。
- 貯留場所:マグマ溜まり(Magma Chamber)
- 上昇速度:圧力や粘性によって決まります。
3. 冷却と結晶化
マグマが冷却することで、鉱物が順番に結晶化して火成岩が形成されます。この過程を記述するのが**ボーエンの反応シリーズ(Bowen’s Reaction Series)**です。
ボーエンの反応シリーズ
- 連続反応系列:
斜長石(Plagioclase)がカルシウムに富むものからナトリウムに富むものへと変化します。 - 不連続反応系列:
オリビン(Olivine)、輝石(Pyroxene)、角閃石(Hornblende)、黒雲母(Biotite)の順に結晶化します。
火成岩の化学組成
火成岩の化学組成は、マグマの起源や進化過程を反映しています。
主な成分
- 酸化物
火成岩の化学組成は、酸化物(例:SiO$_2$、Al$_2$O$_3$、FeOなど)で表されます。 成分 含有量(重量%) 特徴 SiO$_2$ 45~75 多いほど酸性(例:花崗岩) Al$_2$O$_3$ 10~20 長石の形成に寄与 FeO/MgO 5~15 暗色鉱物の形成に影響 - 揮発性成分
水(H$_2$O)や二酸化炭素(CO$_2$)などの揮発性成分は、火山活動や岩石形成に大きな影響を与えます。
分類基準
化学組成に基づき、火成岩は以下のように分類されます:
- 酸性岩(SiO$_2$ > 65%):花崗岩など
- 中性岩(SiO$_2$ = 52~65%):閃緑岩など
- 塩基性岩(SiO$_2$ = 45~52%):玄武岩など
- 超塩基性岩(SiO$_2$ < 45%):かんらん岩など
火成岩の物理的性質
火成岩の物理的性質は、その鉱物組成や形成環境によって異なります。
性質 | 特徴 |
---|---|
密度 | 深成岩は高密度、火山岩は低密度 |
硬度 | モース硬度5~7 |
色 | 酸性岩は明るい色、塩基性岩は暗い色 |
構造 | 粗粒(深成岩)または微粒(火山岩) |
火成岩の地質学的意義
火成岩は、地球の歴史やプレートテクトニクスを理解するための鍵となる岩石です。
- プレート境界での形成:
- 収束境界:沈み込み帯で加水融解により形成。
- 発散境界:減圧融解による玄武岩の生成。
- 地殻形成: 火成岩は、地殻の主要構成要素であり、大陸地殻は主に花崗岩質、海洋地殻は主に玄武岩質です。
火成岩の応用
- 建材:花崗岩は耐久性と美観から建築に広く利用されています。
- 資源:ペグマタイト(深成岩の一種)は希少金属の供給源です。
- 地熱エネルギー:火成岩の熱を利用した発電が行われています。
まとめ
火成岩は、地球の進化や内部プロセスを理解する上で不可欠な要素です。その形成プロセスから物理・化学的特性、そして地質学的意義に至るまで、多岐にわたる科学的知見が得られます。火成岩の研究は、地球の歴史だけでなく、宇宙の他の天体の理解にもつながる広がりを持っています。