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ベイズ推定の基本的な考え方をわかりやすく

はじめに

ベイズ推定(Bayesian Estimation)は、確率と統計の分野で重要な概念の一つです。この手法は、観測データに基づいて未知のパラメータの分布を推定する際に使用されます。特に、データが新たに得られるたびに推定値が更新される特徴を持つため、動的な状況において有効です。本記事では、ベイズ推定の基本的な考え方をわかりやすく説明し、その背後にある科学的な理論を紹介します。

ベイズの定理とは?

ベイズ推定の基礎となるのは、ベイズの定理(Bayes’ Theorem)です。この定理は、ある事象が発生したときに別の事象が起こる確率を更新する方法を提供します。数学的には次のように表されます:

$$
P(\theta|D) = \frac{P(D|\theta)P(\theta)}{P(D)}
$$

ここで、

  • $P(\theta|D)$ は、事後確率(Posterior Probability):データ $D$ が得られた後のパラメータ $\theta$ の確率。
  • $P(D|\theta)$ は、尤度(Likelihood):パラメータ $\theta$ の下でデータ $D$ が得られる確率。
  • $P(\theta)$ は、事前確率(Prior Probability):データ $D$ を得る前のパラメータ $\theta$ の確率。
  • $P(D)$ は、証拠(Evidence):データ $D$ が観測される全体の確率。

この式が示しているのは、新しいデータが得られるたびに、パラメータ $\theta$ に関する我々の信念(確率)がどのように更新されるかということです。

ベイズの定理の解釈

ベイズの定理は、以下のように解釈できます:

  1. 事前確率 $P(\theta)$:これは、観測データを得る前に、パラメータ $\theta$ がどの程度信じられるかを示します。過去の知識や経験に基づいて設定されることが多いです。
  2. 尤度 $P(D|\theta)$:観測データが与えられたとき、それがパラメータ $\theta$ の元でどの程度生じやすいかを示します。
  3. 事後確率 $P(\theta|D)$:これは、観測データを得た後に、パラメータ $\theta$ がどの程度信じられるかを示します。事前確率と尤度の積が事後確率として更新されます。

この手法により、新たなデータが得られるたびに、より精度の高い推定が可能となります。

ベイズ推定の応用

ベイズ推定は多くの分野で応用されています。たとえば、機械学習、医療診断、経済学、天文学などです。これらの応用では、過去のデータや知識に基づいて、新たに得られたデータを元に推定や予測を行います。

例:コイン投げ

簡単な例として、コイン投げを考えてみましょう。コインが公平かどうか(つまり、表が出る確率が50%かどうか)を調べたいとします。この場合、コインが公平である確率 $\theta$ を推定することが目標です。

  1. 事前確率の設定: 最初に、コインが公平であると考える前提で、$\theta = 0.5$ とします。
  2. データの収集: 実際にコインを10回投げ、8回表が出たとします。このデータに基づいて、事後確率を計算します。
  3. 尤度の計算: コインが表を出す確率 $\theta$ に基づいて、得られたデータの尤度を計算します。尤度は次のように計算されます:

$$
P(D|\theta) = \theta^8 \cdot (1-\theta)^2
$$

  1. 事後確率の計算: ベイズの定理を適用して、事後確率を計算します。この事後確率が、データに基づいて更新された $\theta$ に対する我々の信念です。

ベイズ推定と頻度主義

ベイズ推定は、頻度主義(Frequentist)と対比されることがよくあります。頻度主義では、パラメータを固定の値として扱い、その値に対して統計的な推測を行います。一方、ベイズ推定では、パラメータ自体を確率変数とみなし、その分布を推定します。

頻度主義とベイズ推定の違い

  • パラメータの捉え方: 頻度主義ではパラメータは固定されているが、ベイズ推定ではパラメータは確率変数として扱われます。
  • 推定の方法: 頻度主義では、サンプルに基づいて確率的な結論を導きますが、ベイズ推定では事前分布とデータに基づいて事後分布を計算します。

この違いにより、頻度主義の手法がデータに依存するのに対して、ベイズ推定は事前の知識を取り入れることができるという利点があります。

ベイズ推定の計算方法

ベイズ推定の計算は、観測データと事前分布に基づいて行われます。実際には、事後分布を計算するために以下の手順を踏みます。

  1. 事前分布の設定: 観測データを得る前のパラメータに対する信念を表す分布を設定します。
  2. 尤度の計算: 得られたデータに基づいて、各パラメータがどの程度データを説明できるかを計算します。
  3. 事後分布の計算: ベイズの定理を用いて、事前分布と尤度から事後分布を計算します。
  4. 推定値の導出: 事後分布から、パラメータの推定値を導きます。推定値としては、事後分布の平均や最頻値が用いられます。

事例:正規分布のパラメータ推定

もう少し複雑な例として、正規分布の平均 $\mu$ をベイズ推定する方法を考えてみます。観測データ $D = {x_1, x_2, …, x_n}$ が正規分布に従っていると仮定します。

  1. 事前分布の設定: $\mu$ に対する事前分布として、平均 $\mu_0$、分散 $\sigma_0^2$ の正規分布を仮定します。

$$
P(\mu) = \mathcal{N}(\mu_0, \sigma_0^2)
$$

  1. 尤度の計算: 尤度は、観測データが得られる確率として次のように表されます。

$$
P(D|\mu) = \prod_{i=1}^n \mathcal{N}(x_i|\mu, \sigma^2)
$$

  1. 事後分布の計算: 事前分布と尤度から、ベイズの定理を用いて事後分布を計算します。事後分布も正規分布となります。

$$
P(\mu|D) = \mathcal{N}(\mu_n, \sigma_n^2)
$$

ここで、$\mu_n$ と $\sigma_n^2$ は、事前分布と観測データに基づいて更新された平均と分散です。

  1. 推定値の導出: 事後分布の平均 $\mu_n$ が、更新されたパラメータ $\mu$ の推定値となります。

結論

ベイズ推定は、観測データを基にしてパラメータの分布を動的に更新する強力な手法です。事前知識を取り入れることができるため

、頻度主義とは異なる視点から推定や予測を行うことができます。この記事では、ベイズ推定の基本的な考え方を初心者にもわかりやすく解説しましたが、この手法の応用範囲は非常に広く、さまざまな分野で利用されています。今後、具体的な応用例やより複雑な事例を通じて、ベイズ推定のさらなる理解を深めていただければと思います。