今回は、分子動力学(MD)で使われるパーシステントホモロジーについて説明します。
パーシステントホモロジー
パーシステントホモロジーは原子配置の形状の情報を定量化するツールです。分子動力学において、分子の特性を完全に無視して、配置だけを特徴として得ることができます。
パーシステントホモロジーはトポロジーやホモロジーの分野に位置します。
ここからは具体的な分析方法について説明していきます。
各原子に対して、原子とは別の半径$r$の球を想定します。この半径を大きくしていくと、球同士が接触して重なり合い、空隙部分が閉空間となります。
この閉空間に着目するのが、パーシステントホモロジーです。
各原子を囲む球の半径を徐々に大きくしていくと、空隙部分には次第に閉空間が生まれ、さらに半径を大きくすると閉空間が埋まります。
この閉空間が生まれた時刻をBirth Timeと呼び、閉空間が消えた時刻をDeath Timeと呼び、この差分のことをパーシステンスと呼びます。
どんな複雑な原子配置でもパーシステンスは2次元のグラフで表せるので、データの定量評価として非常に便利です。
また、同じような形状や位置関係であれば似たデータが得られるため、原子の分散状況などのトポロジー情報だけに注目したい場合には非常に有用なツールとなります。
動的分布関数
パーシステントホモロジーと関連する語句として、動的分布関数についても補足しておきます。
ある原子からの距離$r$により、原子の分布を表したものが動的分布関数です。
位相角度による影響がないので、原子の位置関係を調べたい場合に使用します。
動的分布関数は無限遠で1になるように規格化されています。
おわりに
今回はパーシステントホモロジーについて説明しました。
分子動力学は原子特性と分散情報があるため、情報が多くなりがちです。上手くトポロジーの情報を得ることで、情報処理が楽になります。
これからもコンピュータの発展とともに分子動力学は伸びる分野なので、理解しておくと役に立つでしょう。
分子動力学に関しては、下記で解説しています。良ければどうぞ。