今回は、エンジニアが知っておきたい「1Dモデリング」について説明します。
モデリングとは、簡単に言うと入力に対して適切な出力を出す装置を作ることです。
プログラミングでいうと引数と返り値を持つ関数、数学でいうと入力$x$と出力$y(x)$の関係となります。
1Dモデリング
1Dモデリングは実は必ずしも1次元である必要はありません。
重要なのは「本質を捉えて、シンプルな式として記述すること」です。
これによって、3Dシミュレーションや複雑な実験評価を簡略化し、誰でも短時間で評価できる仕組みが整えられます。
1Dモデリングは現実を模擬して実験評価から導き出す方法もありますが、3D-CAEから得ることもできます。
理論的に説明できるなら理論式によってモデル化し、経験的に指標値がわかるならそれを組み込んだ式を立てます。
理論式も経験則もあくまで条件が限られており、1Dモデリングでは限定的な条件を対象とすることに注意が必要です。
そのため、立式者だけでなく、利用者も1Dモデルの適用範囲を理解して利用することが重要です。
理論的モデリング
理論に基づくモデリングとしてよく利用されるのが「電気回路モデル」です。
熱や剛体運動、流量などを電気回路に模擬してモデルを立てます。
熱は温度の高いところから低いところに移動し、流体も圧力の高いところから低いところに移動します。電気回路も電圧の高いところから低いところに移動するため、熱や流体はよく電気回路で模擬されやすい対象です。
電気回路化することで、複雑な式を見るよりも容易に理解しやすく、実現象との対応についてもイメージしやすいのが特徴です。
経験的モデリング
経験的モデリングは、取得したデータをもとにして立式を行う手法です。
最近ホットなディープラーニングを用いることで、重要な指標を探索することができるため、経験的といえど新しい取り組みも行われている分野です。
ディープラーニングを使う場合は、指標値がもっともらしいかの確認と、使用したデータに偏りがないかを確認しておくことが重要です。
1D-CAE
最後に、1D-CAEについても触れておきましょう。
1Dモデルに基づいて行われる解析が、1D-CAEです。
1D-CAEは、常微分方程式などの簡易的な式で行われ、車や人体など全てを計算するには途方もない複雑な対象を評価するために使われます。
一方で、個々の要素に着目したい場合は、有限要素法などの3D-CAEが役に立ちます。
よって、1D-CAEは3D-CAEの代替品として使うだけでなく、上手くお互いを組み合わせることでさらなる価値を生んでくれるツールになります。
おわりに
今回は1Dモデリングと1D-CAEについて説明しました。
PCの計算力が年々上がっているとは言え、まだ全てを3次元的に計算することはできません。
そのため、1Dモデリングを用いて情報を選抜して、上手く計算対象の特徴を捉える必要があります。
流体力学などは実際の現象を簡易化するのに特化している分野ですが、計算力が上がっても、まだまだ簡易化することの重要性は廃れません。
1D化はエンジニアのセンスが大きく影響しており、まだまだエンジニアの経験や知識が求められる時代は続きそうですね。