ここでは散逸粒子動力学の基本的な内容について説明します。
一般的な分子動力学では原子を対象として、ナノ秒オーダーの計算を行います。
一方で実用を考えると、さらにスケールの大きな計算がほしいところです。
そこでさらにマクロな値を知るために、ミクロとマクロの間のスケールであるメソスケールを対象とした解析を行うのが散逸粒子動力学(dissipative particle dynamics)です。
散逸粒子動力学では、流体の小さな飛沫をビーズという1つの粒子として考えます。
ビーズには、ランダム力と散逸力、他のビーズとの相互作用が与えられます。
散逸粒子動力学で用いられる力は下記で計算できます。
$$ f_i = \sum (F_{ij}^C + F_{ij}^D + F_{ij}^R) $$
ここで$F^C$は保存力で、ビーズ同士に斥力を与えます。
$$ F_{ij}^C = \begin{cases}
a_{ij} (1 – d_{ij} n_{ij}) & (d_{ij} < 1) \\
0 & (d_{ij} > 1)
\end{cases} $$
ここで$d_{ij}$は2粒子の距離で、$n_{ij}$は単位ベクトルです。
$F^D$は散逸力で、2粒子の速度差により粘性的な力を与えます。
$$ F_{ij}^D = \begin{cases}
– \gamma \omega^D d_{ij} (n_{ij} \cdot v_{ij} ) n_{ij} & (d_{ij} < 1) \\
0 & (d_{ij} > 1)
\end{cases} $$
$v_{ij}$はビーズの速度差で、$\omega$は距離に応じた重み関数です。
$F^R$はランダム力で、下記で表されます。
$$ F_{ij}^R = \begin{cases}
\sigma \omega^R d_{ij} \theta_{ij} n_{ij} & (d_{ij} < 1) \\
0 & (d_{ij} > 1)
\end{cases} $$
ランダム力は全体で収支が一致するように設定する必要があるため、別途計算を行うことになります。
おわりに
今回は散逸粒子動力学について説明しました。
散逸粒子動力学は粗視化した分子動力学法の一種です。これによりミクロな解析となると第一原理分子動力学や全原子分子動力学などがあります。
それらとの住み分けを理解して、散逸粒子動力学の適した対象を計算する必要があります。特にスケール感が重要ですので、対象のスケールを理解するようにしましょう。
また、計算機の進歩は著しいので、スパコンなどでどのくらいの計算ができるのかを最新の研究から調べてみると良いでしょう。