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サーミスタと白金測温抵抗体の違い

はじめに

温度測定は、様々な産業や科学研究において非常に重要なプロセスです。温度を正確に測定するためのセンサーとして、サーミスタと白金測温抵抗体(RTD)が広く利用されています。この記事では、これら二つの温度センサーの基本的な原理、特性、利点と欠点、さらには物理現象に基づいた違いについて解説します。

温度センサーの基本原理

サーミスタ

サーミスタは、温度に応じて抵抗値が変化する半導体材料で作られた温度センサーです。一般に、サーミスタは負の温度係数(NTC)と正の温度係数(PTC)の二種類に分類されます。

  • NTCサーミスタ: 温度が上昇すると抵抗値が減少する特性を持っています。これは、温度が上がることで半導体のキャリア(電子やホール)が増加し、導電性が向上するためです。
  • PTCサーミスタ: 温度が上昇すると抵抗値が増加する特性を持っています。これは、特定の温度以上で相変化を起こし、導電性が低下するためです。

白金測温抵抗体(RTD)

白金測温抵抗体(RTD)は、白金を用いた温度センサーで、温度変化に伴う抵抗値の変化を測定します。RTDは、一般に、温度が上昇するにつれて抵抗値が線形的に増加します。この特性は、白金の温度抵抗特性によるもので、以下のように表されます。

$$
R(T) = R_0 (1 + \alpha (T – T_0))
$$

ここで、$R(T)$は温度$T$における抵抗値、$R_0$は基準温度$T_0$での抵抗値、$\alpha$は白金の温度係数です。

サーミスタとRTDの比較

1. 測定範囲

  • サーミスタ: 通常、-40℃から125℃程度までの範囲で使用されますが、高温環境では使用が制限されることがあります。
  • RTD: -200℃から850℃程度の幅広い温度範囲で使用でき、高温でも安定した性能を発揮します。

2. 精度

  • サーミスタ: 高感度であるため、小さな温度変化にも対応できますが、測定範囲が狭いため、精度は温度範囲によって変わります。
  • RTD: 高精度で安定した特性を持ち、長期的な安定性に優れています。多くの場合、±0.1℃の精度を持ちます。

3. 応答速度

  • サーミスタ: 小型であり、熱容量が低いため、応答速度が速いです。迅速な温度変化を測定するのに適しています。
  • RTD: 一般的には応答速度はサーミスタよりも遅く、大きなサイズや高い熱容量のため、温度変化に対する応答が遅れることがあります。

4. コスト

  • サーミスタ: 一般的に安価であり、特に小型のアプリケーションでコスト効率が高いです。
  • RTD: より高価ですが、高精度が要求されるアプリケーションにおいてはその価値があります。

5. 耐環境性

  • サーミスタ: 耐久性が低く、湿気や化学物質に敏感です。過酷な環境下では劣化しやすいです。
  • RTD: 白金材料は耐腐食性が高く、過酷な環境でも安定した性能を発揮します。

物理現象に基づく特性の違い

サーミスタの動作原理

サーミスタの抵抗値は、材料内のキャリアの数に依存しています。温度が上昇すると、半導体内のキャリアが増加し、抵抗値が減少します。この現象は、バンドギャップエネルギーの関係によって説明されます。温度が上昇すると、より多くの電子がバンドギャップを越えて伝導帯に移動し、導電性が向上します。

RTDの動作原理

RTDは、白金の抵抗値の変化を利用して温度を測定します。白金は、温度変化に対して非常に安定した抵抗特性を持っており、これは白金原子の結晶構造が高温でも安定しているためです。この特性により、RTDは高精度な温度測定が可能です。

使用例

サーミスタの使用例

サーミスタは、温度センサーとして様々なデバイスに利用されています。以下は具体的な使用例です。

  • 家電製品: 冷蔵庫やオーブンなどの温度管理。
  • 医療機器: 体温計や温度センサーに使用。
  • 自動車: エンジン温度や冷却系統の温度測定。

RTDの使用例

RTDは、高精度が要求される場面で使用されます。以下は具体的な使用例です。

  • 工業プロセス: プロセス制御や品質管理における温度監視。
  • 科学研究: 実験室での精密な温度測定。
  • 航空宇宙: 極限環境下での温度測定。

まとめ

サーミスタと白金測温抵抗体(RTD)は、それぞれ異なる特性を持つ温度センサーです。サーミスタは高感度で迅速な応答が特徴であり、コストパフォーマンスに優れていますが、測定範囲や耐環境性には限界があります。一方、RTDは高精度で広い測定範囲を持ち、過酷な環境でも安定した性能を発揮しますが、コストが高くなることがあります。

これらの違いを理解し、適切な温度センサーを選定することで、さまざまなアプリケーションにおいて正確な温度測定を実現することが可能です。温度測定は科学技術の基盤であり、その精度は多くの分野において成功を左右します。