ここでは数回に分けて乱流について解説します。
前回は$k-\varepsilon$・$k-\omega$・SSTの分類について説明しました。
基本事項は前の2回で説明しているため、ぜひ事前知識としてご覧頂くと今回の内容も理解しやすいと思います。
今回はLESモデルについて説明します。
LES
大きい渦は直接計算し、小さい渦はモデル化する手法はLES(Large Eddy Simulation)です。
全ての渦を直接計算する手法がDNS(Direct Numerical Simulation)で、全ての渦をモデル化するのがRANS(Reynolds-Averaged Navier-Stokes Equation)です。
LESはその2つの中間に当たる手法です。
LESでは大規模渦を直接計算するため、流れに大きな影響を与える大きな渦の非等方性まで考慮できるのが特徴です。
GSとSGS
格子サイズ(GS:グリッドスケール)を基準として、それ以下のスケールをSGS(サブグリッドスケール)と呼び、モデル化の対象とします。
LESモデルでは、SGSでモデル化して得られた値が、GSの式に渡される形となります。
GSの式は下記となります。
$$\frac{\bar{D} \bar{u_i}}{\bar{D} t} = – \frac{1}{\rho} \frac{\partial \bar{p}}{\partial x_i} + \frac{\partial}{\partial x_j} (- \tau_{ij} + \nu(\frac{\partial \bar{u_i}}{\partial x_j} + \frac{\partial \bar{u_j}}{\partial x_i}))$$
上付きバーのついた値はフィルター操作後の値を意味しています。
GSの式に小さな渦の影響であるSGS応力$\tau_{ij}$が入ることで、大小渦の影響が考慮できます。
おわりに
今回はLESモデルについて説明しました。
RANSと大きく異なるのは、大きな渦の非等方性を考慮できることです。
渦の特徴を捉えられるため、計算力が十分高い場合はLESを選択することで精度を高めることができます。
第3回に分けて乱流の基本事項、RANS、LESについて説明しました。これで実用的なモデルまでの理解は十分に行えたと思います。
もし今までの内容をまだ見られていない方はそちらもどうぞ。
次回は少し足早に説明したレイノルズ応力などの基本事項について別視点で補足説明を行いたいと思います。