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分子動力学法の分類【量子・第一原理・全原子・粗視化】

分子動力学方(molecular dynamics)では、原子や分子と対象として計算を行います。しかし原子はあまりにも小さすぎるため、実用性のある結果を得るのが非常に難しいです。

そこで、スケールを調整してマクロに近い計算を得る工夫が行われます。

ここでは電子まで計算する量子計算から多数の分子を一つの粒子として扱う粗視化MDまで紹介します。

量子分子動力学

全ての原子について、電子も原子核も量子力学的な扱いをする手法です。最も厳密に原子を解析していますが、あまりにも小さいスケールを計算しているのがデメリットです。

計算できる原子数が限られるため、原子の種類も数も対象もかなり限られます。

第一原理分子動力学

第一原理分子動力学では、電子は量子分子動力学と同様に量子力学的に扱う一方で、原子核は簡略化します。

互いにクーロン力を与える粒子に対して、波動方程式を解く手法です。

原子核は質量が大きいので簡単に古典力学で計算でき、電子の運動を波動方程式で計算するのが負荷の高い部分となります。

全原子分子動力学

全原子分子動力学では、原子を電荷を帯びた一つの計算点として考え、原子をバネモデルなどでつなげた分子同士の相互作用を計算します。

古典分子動力学とは、全原子分子動力学を指します。そのため、分子動力学について解説する書籍は多くが全原子分子動力学について解説しており、最も研究が進んでいる分野とも言えます。

粗視化分子動力学

全原子分子動力学でスケールが充分でない場合は、原子の集合を一つの計算点として考える手法が取られます。例えば、散逸粒子動力学などがあります。

これにより、1つの分子を1つの計算点としたり、高分子を数個の計算点で連結するなど、粗視化の度合いが技術者に任されることになります。

ただし、量子・分子動力学のような理論的な物性値の設定ができないため、粗視化した計算ではパラメータ選定が非常に難しいです。そのため、結局小さなスケールの解析を行い、そこから求めたパラメータを使うことになる場合もあります。

おわりに

今回は4種の粗さの分子動力学法について紹介しました。分子動力学といえば全原子分子動力学となりがちですが、それ以外の手法も進んでいます。

特に粗視化分子動力学は実用性も高いため、現在の計算力の向上とともに解析できる範囲も増えるでしょう。